誕生日ライブを終えて
mi:na
毎回、ライブの開催にお心を尽くしてくださるサロンの先生方、一緒にライブを盛り上げてくださる生徒の皆様、ご来場くださったお客様、本当にありがとうございました。
コロナ禍の始まりから4年が経ち、世の中に落ち着きが戻ってまいりました。コロナ渦中、私自身シンガーとしての存在意義を深く考えさせられました。そして、わずかでも前に進めないだろうか?と考え始めたのです。『Porgy and Bess』では、予め録音したナレーションを流し、ストーリーに沿って弾き語るという試み、また『Just Be Myself』では、リズムマシーンとの共演を試みました。どちらも好評をいただき嬉しくなり、更に幅を広げてみようと考え、今回の『DTM』に到着したわけです。
DTMとは、Desk Top Musicの略称で、パソコンを使った音楽制作のこと、つまり楽器の音をパソコンで作成し、重ねていくという作業です。ITに全く疎い私の、最も苦手としている領域です。比較的、使い方の易しいDAW(DTMを行うために使用するアプリケーション)を使用しましたが、操作方法を覚えるだけでも数か月を要し、そこから手探りでの気が遠くなるような作業が始まりました。気が付けば、一日8時間もパソコンと向かい合うこともありました。譜面一枚と、優秀なミュージシャンが数名居るだけで、1時間でリハーサルから本番まで終えてきた、これまでのステージとは全く別物です。集中力が続かず、何度もくじけそうになりました。ですが、優秀なミュージシャンと共演してきた30年以上の年月に、吸収したことは山のようにある、感性も研鑽されてきた…そう信じるしかありません。
メロディを入力し、コードをつけ、リズム(ドラム・パーカッション)を打ち込んでいく、合わせながらベースを打ち込み、ピアノ、ギター、ストリングス、管楽器などを加えていきます。ヘッドホンから流れる音は、人が奏でる生の楽器ではないので、長時間ヘッドホンをつけての作業は、五感がとても疲れます。遅々として進まず、同じ姿勢を長時間続けているため、首や背中、腰にもダメージが大きい。初老の私の心身は本当に疲れ果ててしまいました。そんな自分を『今、ここでしっかり学んで身に着けておけば、必ず、ストレスなくDTMで楽曲を製作できるようになれる!どんなに苦しくても、この境地を抜ければ必ず道が開ける!』と励ましながら…、未完成ではあるものの、独りライブを迎えることができました。
こんな精神力、集中力がまだ自分に残っていたとは?!このエナジーは一体どこから来たのか?驚き、感激しながら考えました。そして、はっきり解りました。力の源は、生徒さんたちでした。いわゆるパンデミックの中、アクリル板やマスクを使ったレッスンにも、皆様は当然のように元気に通ってくださり、歌うことを切に求めておられました。世がどんな時勢であっても、自分の人生を豊かに生きようとしておられた、教室をとりまく皆様の『底力』に、私が教えられ、エナジーをいただいているのです。
最後になりましたが、もう一つ、苦しい作業を支えたものがあります。それは、発見です。
各楽器と個別に向き合えたことで、今まで何もわかっていなかった楽器のこと(音の科学や、表現のしかたなど)を知った喜びです。今まで、如何に楽器のことをわからず、自分だけで歌ってきたことか…。恥ずかしい限りです。コラボレーションの奥の深さ、苦しみながらもその入り口だけは見つけられたように感じます。この『DTM』との出会いは、私にとって幾つもの学びのスタートでもありました。
これからも、皆様と共に学びながら音楽の喜びを分かち合ってまいりたいです。
感謝と敬意を込めて
mina